小児歯科
子供の虫歯について

子供が虫歯になる原因とは
乳歯ならではの特性とメカニズム「毎日歯磨きをしているのに、どうして虫歯になってしまうの?」と悩まれる親御さんは少なくありません。子供の虫歯の原因を理解するには、まず「乳歯」の特性を知る必要があります。乳歯は永久歯よりもずっとデリケートです!乳歯(子供の歯)は、永久歯(大人の歯)に比べて一番外側の強くて硬い層であるエナメル質の厚さが半分ほどしかありません。そのため、一度虫歯になると進行が非常に早く、あっという間に大きな穴があいたり、神経まで到達してしまうのが特徴です。また、乳歯は再石灰化(溶け出した歯を修復する作用)の力が弱いため、大人以上に注意が必要です。
虫歯を構成する
「3つの要素」と「時間」
虫歯は、以下の3つの要素が重なり、そこに「時間」が経過することで発生します。

1.細菌(ミュータンス菌など)
歯垢(プラーク)の中に潜む細菌が、食べ物に含まれる糖分をエサにして「酸」を作り出します。
2.糖質(エサ)
お菓子だけでなく、ご飯やパン、果物、ジュースなどに含まれる糖分です。
3.歯質
歯の強さや、唾液の質・量です。ここに「時間(糖分が口の中に留まっている長さ)」が加わります。ダラダラと間食をしたり、寝る前に甘いものを摂取したりすると、口の中が酸性の状態が長く続き、歯が溶け始めて虫歯になります。
子供特有の落とし穴
子供の歯は形が複雑で、特に奥歯の溝(小窩裂溝)が深く、汚れが溜まりやすい構造をしています。自分自身のブラッシングだけでは、これらの溝に入り込んだ汚れを完全に取り除くことは困難です。これら「歯の構造」「菌の活動」「食習慣」が組み合わさることが、子供の虫歯の大きな原因となります。
乳歯の虫歯について

「どうせ生え変わるから」と
放っておくのが危険な理由
「乳歯はいずれ抜けてしまうから、むし歯になっても大丈夫ですよね?」というご質問をいただくことがあります。しかし、結論として、乳歯のむし歯を放置することは、将来生えてくる永久歯や、お子様の成長そのものに大きなリスクを招くことになります。乳歯には、単に「食べ物を噛む」以上の、大切な役割があるからです。
痛みが出にくいからこその怖さ
乳歯のむし歯の大きな特徴は、「痛みを感じにくい」ことです。大人の歯に比べて神経の通り道が広いため、むし歯が神経の近くまで進んでいても、お子様が痛みを訴えないケースは多々あります。
親御さんが「穴があいているな」と気づいた時には、すでに神経の処置が必要なほど進行していることも珍しくありません。「痛がっていないからまだ大丈夫」という判断は、乳歯においては非常に危険です。
永久歯への「負のバトンタッチ」
乳歯のむし歯を放置すると、その真下で出番を待っている永久歯に悪影響が及びます。
歯の質が弱くなる
乳歯の根の先に膿が溜まるほど進行すると、次に生えてくる永久歯の表面が変色したり、エナメル質が弱くなったりすることがあります。
歯並びが悪くなる
乳歯には「永久歯が生えてくる場所を確保する」というガイド役の仕事があります。むし歯で乳歯を早期に失ってしまうと、隣の歯が空いたスペースに倒れ込み、永久歯が正しい位置に生えられず、ガタガタの歯並びになる原因を作ってしまいます。
健やかな成長を妨げる原因に
お口の健康は、全身の成長と直結しています。
偏食と栄養
奥歯がむし歯でしっかり噛めなくなると、お子様は無意識に柔らかいものばかりを好むようになります。これが偏食に繋がり、成長期に必要な栄養摂取を妨げることがあります。
顎の発達
片側の歯がむし歯になると、反対側ばかりで噛む癖がつきます。これが続くと、顎の成長のバランスが崩れ、顔の形にも影響を与える可能性があります。
発音への影響
前歯のむし歯を放置して早期に失うと、サ行などの発音が不明瞭になり、言葉の学習に影響が出ることもあります。
私たちは「未来の歯」を
守っています
乳歯の治療は、単に目の前の穴を埋めるだけではありません。それは、次に控えている一生ものの永久歯が、最高の状態でデビューできるように「場所」と「環境」を整える準備期間でもあります。
たとえ小さなお子様で治療が難しくても、進行を止める薬を塗ったり、定期的なケアで管理したりと、その時にできる最善の方法があります。「これくらい、放っておいても大丈夫かな?」と迷われたら、ぜひお早めにご相談ください。
虫歯は何歳からなるのか

歯が生えた瞬間が
「予防のスタート」
「まだ離乳食だし、甘いものもあげていないから大丈夫」と思われがちですが、実はむし歯のリスクはお子様が生後半年を過ぎ、最初の前歯が顔を出したその日から始まっています。
むし歯になる可能性があるのは
「生後6ヶ月」から
個人差はありますが、一般的に生後6〜9ヶ月頃に下の前歯が生え始めます。お口の中に「歯」という硬い組織が存在するようになると、そこには汚れ(プラーク)が付着し、むし歯菌が活動する場所ができてしまいます。
この時期のむし歯は特に「哺乳瓶むし歯(上手に卒乳できていない場合などに起こるもの)」と呼ばれ、上の前歯の裏側など、自分では見えにくい場所から進行するのが特徴です。
特に注意が必要な
「1歳半から3歳」の時期
厚生労働省の統計などを見ても、1歳児でむし歯がある子はごくわずかですが、2歳、3歳と年齢が上がるにつれてその割合は急激に増えていきます。これにはいくつかの理由があります。
奥歯(乳臼歯)が生えてくる
1歳半を過ぎると奥歯が生え始め、食べ物をすり潰せるようになります。奥歯の溝は汚れが溜まりやすく、むし歯リスクが一気に高まります。
食生活の変化
離乳食が完了し、大人と同じような食べ物や、砂糖を含むおやつを口にする機会が増えます。
自分でやりたがる時期
「自分で磨きたい!」という自立心が芽生える時期ですが、お子様の手先の技術だけでは汚れを落としきれません。
「白濁(はくだく)」は
危険信号
むし歯というと「黒い穴」をイメージされるかもしれませんが、初期のむし歯は「白く濁ったような色」をしています。これは、歯の表面のミネラルが溶け出し始めているサインです。
この段階であれば、まだ歯を削ることなく、フッ素塗布や徹底したクリーニングで健康な状態に戻せる(再石灰化できる)可能性が十分にあります。毎日仕上げ磨きをする際に、歯の根元や表面に「不自然に白い部分」がないかチェックしてあげてください。
「歯医者デビュー」の
ベストタイミング
私たちは、「下の歯が生えてきたら」を一つの目安として受診をお勧めしています。
「まだ早いのでは?」と感じるかもしれませんが、この時期の受診の目的は治療ではなく「予防の環境づくり」です。
- 正しい仕上げ磨きのコツをお伝えする
- お口の成長(歯並びや噛み合わせ)をチェックする
- 歯医者さんという場所に慣れてもらう
早い段階から定期的に歯科医院に通う習慣がついているお子様は、将来的にむし歯になる確率がぐっと低くなるだけでなく、万が一治療が必要になっても、恐怖心なくスムーズに受けられるようになります。
「何歳から行けばいいのかな?」と迷われたら、ぜひ最初の1本が生えたタイミングで、遊びに来るような気持ちでお越しください。
虫歯治療の流れ
虫歯の段階(C1~C4)により治療法が異なります。
C1:きわめて初期の、
虫歯の前兆となる段階
歯の表面が脱灰(少し溶け始めた)状態。痛みはなく、透明だったエナメル質が白く濁った状態です。

治療法
- 歯科医院での高濃度フッ素塗布
- 歯部分にシーラントと呼ばれる詰め物をする
- フッ素入り歯磨き粉での歯磨き(ご自宅でのセルフケア)
治療の流れ
歯のクリーニング
歯面清掃専門の器具を使用してプラークや歯石を除去します。フロスにより歯と歯の間の汚れを落とし、仕上げに歯を磨き上げていきます。虫歯の原因であるプラークや菌のすみかになる歯石を落とし、それらが再付着しないようにつるつるに仕上げます。
歯科衛生士による指導
しっかりと磨いている、と思っていても実は40%もの磨きのこしがあるという報告もあります。しっかりとご自宅でも口腔内を清潔に保てるように歯ブラシの選び方、歯磨き方法、フロスの使い方までサポートいたします。
シーラント
歯の溝など磨きにくい部分を白い樹脂で埋めて汚れをたまりにくくすることでむし歯を防ぎます。
フッ素塗布
歯の表面にフッ素を塗ることでエナメル質を強化し、虫歯になりにくくします。
C1:歯の表面のエナメル質のみが小さな虫歯になっている段階
歯の表面が少しざらつき、溶け出し始めている状態で、歯の溝が黒くなっていたり、薄いエナメル質内にのみ虫歯が進行している状態です。(エナメル質をこえて象牙質まで進行してしまった場合は次項で説明するC2という診断になります)

治療法
高濃度フッ素塗布
歯の表面にフッ素を塗ることで、エナメル質を強化し、虫歯の進行を抑制します。これ以上むし歯を進行させないということが大切になってきます。
治療の流れ
歯のクリーニング
歯面に付着したプラークや歯石を除去します。
虫歯の診断
虫歯の範囲や深さを確認します。
治療法の説明
再石灰化を促す治療と、今後必要となってくる場合のある虫歯部分を削って充填する治療の両方のメリット・デメリットを説明し、患者さんと一緒に最適な治療法を選びます。
治療
選択した治療法に基づいて治療を行います。
C1の治療のポイント
早期発見・早期治療が大切
C1の段階では、痛みを感じないことが多く、気づきにくい場合があります。定期的な歯科検診を受けることが重要です。
治療法の選択
再石灰化を促す治療は、虫歯がごく初期の段階で、かつ、患者さんの生活習慣や口腔ケアの状態によって選択されます。
治療後のケア
治療後も、定期的な歯科検診を受け、正しい歯磨き方法を継続することが大切です。
C1の治療に関する注意点
再石灰化は必ずしも起こるとは限らない
歯の状態や生活習慣など、さまざまな要因によって再石灰化の成功率は異なります。
C2:象牙質まで虫歯が進行した段階
C1の状態からさらに進行し、歯の表面のエナメル質を突き破って、歯の内部にある象牙質まで虫歯が広がった状態です。象牙質が露出していると、甘いものや冷たいものがしみるといった症状が出始めることがあります。

治療法
- 虫歯になっている部分を削り取り、その部分に詰め物をする
- 歯の神経にまで達していない場合は、この治療で虫歯の進行を食い止めることができる
C3:歯髄(神経)まで虫歯が
進行した段階
虫歯がさらに進行し、歯の内部にある歯髄(神経)まで達した状態です。ズキズキとした激しい痛みを感じることが多く、夜中に痛みで目が覚めることもあります。

治療法
根管治療
- 歯の根の内部にある感染した歯の神経を取り除き、歯の内部を洗浄・消毒して、神経の変わりのお薬を詰める治療法です。歯の神経が死んでしまっている場合は、根管治療後に被せ物や詰め物をすることで歯を残すことができます。
抜歯
根管治療が難しく、歯の痛みがどうしても取れない場合、歯を抜くことがあります。
C4:歯根まで虫歯が
進行した段階
歯の根の部分まで虫歯が達した状態です。歯根はエナメル質や象牙質と比べて硬い組織ですが、一度虫歯になると進行が早く、痛みを感じにくいことがあります。

治療法
抜歯
歯茎の下までむし歯が進行していた場合、歯を抜くことがあります。
子供の虫歯について
よくある質問

Q.虫歯はうつりますか?
A.以前は「スプーンの共有は厳禁」「親の虫歯菌がうつるからキスも控えて」といった指導が一般的でした。お母さまお父様も聞いたことがあるかもしれません。
しかし、2023年に日本小児歯科学会が発表した提言では、その考え方がアップデートされています。食器の共有を過度に恐れる必要はありません。最新の研究では、たとえ食器の共有を避けて菌の伝播を遅らせたとしても、それが将来的な虫歯のなりにくさに直結するという明確な根拠はないとされています。つまり、食器の共有を制限することに神経質になりすぎる必要はない、というのが現在のスタンダードな考え方です。
本当に大切なのは「環境づくり」!お子様の口に菌が入るかどうかよりも、入ってきた菌が暴れないような「環境」を整えることの方がずっと重要です。具体的には、以下の3点に力を入れるべきだとされています。
砂糖の摂取制限
菌のエサとなる砂糖をコントロールすること。
フッ素の活用
歯そのものを強くしておくこと。
家族全員のお口を綺麗に
周囲の大人が定期検診を受け、口内の菌の数自体を減らしておくこと。
「うつるかもしれない」と不安になって、お子様との食事やスキンシップをためらう必要はありません。「菌を入れない」努力よりも、家族みんなで「お口を清潔に保ち、正しい食習慣を身につける」こと。それが、結果としてお子様の歯を一番守ることに繋がります。
Q.虫歯になりやすい・なりにくいはありますか?
A.同じように甘いものを食べていても、虫歯になる子とならない子がいます。「うちの子は体質だから……」と諦め半分に仰る親御さんもいらっしゃいますが、実際には「体質」と「習慣」の両方が影響しています。
なりやすさ」に関わる3つの要因
唾液の力(緩衝能)
唾液には、酸性に傾いたお口を中性に戻す力があります。この力が強かったり、唾液の量が多かったりする子は、天然の自浄作用が強く、虫歯になりにくい傾向があります。
歯の質
歯の表面のエナメル質の硬さや、奥歯の溝の深さには個人差があります。これは遺伝だけでなく、歯が作られる時期の栄養状態も関係します。
お口の菌のバランス
幼少期にどのような菌が定着したかによって、将来的なリスクが変わります。体質を知れば、対策が立てられます。
虫歯になりやすい体質」だったとしても、決して防げないわけではありません。早期発見によって、歯を失うことなく過ごせる可能性も大きく上がります。大切なのは、お子様のリスクがどこにあるかを知ることです。自分たちの弱点を知っていれば、例えば「フロスをより徹底する」「フッ素塗布の頻度を上げる」「歯の溝が深い部分にはシーラントをする」といった、その子に合わせたオーダーメイドの予防戦略を立てることができます。「もともと歯が弱いから」と不安になる必要はありません。体質に合わせた正しいケアを継続することがとても大切です。私たちと一緒に、お子様にぴったりの予防法を見つけていきましょう。